月曜日、いつもの席で。



「あー…うん。俺、人と関わるの苦手で。
佐川がいつも俺を気にかけてくれんだけど、それで佐川に迷惑かけんのもなーって」


後輩に心配されて、ほんとダセー。

榎本さんさんは、ははっと寂しそうに笑う。



「迷惑なんかじゃないですよ」


「…え?」


「誰かに声をかけられたり、頼りにされたり。そういうの、嬉しいものです。迷惑なんかじゃないです。」


今度は私が、視線をお味噌汁に向けながら話す。


…だって。私がそう思うから。


誰かに声をかけられる。頼りにされる。それだけで私はここにいていいんだって思える。

それって実はすごく幸せだと思うから。


「ふっ…あー、やっぱ俺ダセー」


「えっ!」


榎本さんが声をあげて笑うもんだから、私は思わず顔を上げた。



「女子高生にまで諭されるとはな。
でも、そうだな。…そっか。」


榎本さんはうんうんと頷いて、


「店長、今度佐川と飲みに来るよ」


と言った。


「…………!おお!そうか!待ってるぞ!」


店長はいまにも泣き出しそうなくらい嬉しそうにしてる。


店長は榎本さんのこと大好きだなあ。


2人で飲みに来ることに、そんなに喜ぶなんて。





………でも私はまだ知らなかった。


店長の、榎本さんがウーロン茶を頼んだときの驚きようの理由も、榎本さんが佐川さんを連れてくると言ったときの喜びようの理由も。


榎本さんにとっては、大きな決断だったんだってこと。


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