軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「生きる宝石のような美しさだな」
ぼそりとレイヴンが声をかけてくれるけれど、セレアの心は晴れなかった。
(褒めてもらえるのは嬉しい。でも、これは愛のない結婚なのよね……)
好意のない結婚に心が沈んでいって、髪飾りとお揃いのブルーローズのブーケに視線を落とした。
「顔色が悪い、俺が夫では嫌か」
「それは、あなたの方ではないのですか?」
(私を助けるためだけに、レイヴンは本当に結婚してもいいと思ってるの?)
世間では世界で一番幸せな瞬間であるはずなのに、とてもじゃないが今の状況を喜べなかった。