軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「俺はセレアを愛している」


 しかし、守りたいと思えば思うほどセレアとすれ違っている気がして、どうしたらいいのかわからずに苛立ってしまう。


 ともかく、今夜は執務室で休もうと考えていたとき、前方から戦術書を小脇に抱えたべリエスが歩いてくるのが見える。


「おや?」 


 どうやら、向こうもこちらに気づいたらしい。


 なぜかニヤリと笑って、軽い足取りで目の前にやってくると廊下の真ん中で向き合うように立つ。


「その顔は、うまくいかなかったようですね」


 いつも胡散臭い笑みを張りつけているべリエスではあるが、この宮殿で一番と言っていいほど信頼を置ける側臣だ。


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