軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「危険だとわかっていて、見ず知らずの俺をあの神殿で匿った。その決断は容易なものではなかったはずだ」


 多くの掟を破り、看病をしたセレアの内心は不安でいっぱいだったはず。なのにレイヴンの前では変わらず笑顔だったのだ。


その健気な姿に、この女を守らなくてはという強い使命感がわいたのを覚えている。


「だから、今度は俺がすべてを敵に回してもセレアを守る」


(これは、揺るがない誓いだ)


 この手に権力があるのも、剣の腕があるのも、すべてが彼女のためだと思えてしまうくらいに、皇帝ではなくひとりの男として想っていた。


< 132 / 281 >

この作品をシェア

pagetop