軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「皇帝陛下としてはいささか問題がありますが、私個人としては称賛しています」
「お前が人を褒めるなんて珍しいな」
べリエスがレイヴンの剣や戦術などのあらゆる場面においての師であるからか、軍事司令官としてではなく、彼個人として自分を認めてくれたことの方が嬉しく思った。
「お咎めと半分半分……といったところですよ」
「それでも、構わん」
満足げに笑うレイヴンにべリエスは肩をすくめると「やれやれ」と呆れたように首を横に振る。その表情はいつもの貼りつけた笑みではなく、少し崩れて人間味があった。
「晩酌なら俺もつき合おう」
「仕方ないですね、〝私が〟つき合ってあげましょう」
(どうせ、今宵はセレアの姿がチラついて、眠れん)
自嘲的に口元を歪めて、疼く胸の痛みを意識から除外しようと努める。
べリエスを話し相手に煩悩をごまかすことにしたレイヴンは、行き先を執務室から軍事司令官殿の自室へと変えたのだった。