軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
◇五章◇
新婚生活は波乱の幕開け
レイヴンの妻となって五日が経った。今日も期待を込めて隣を見るが、寝台にセレアの以外の誰かが寝ていた形跡はない。
「もう二度と、私の前に姿を現さないつもりかしら」
あれから、レイヴンが自室に戻ってきた様子がない。というのも、初夜の日に喧嘩別れのようになってしまったので当然といえば当然だ。
一方通行の恋が寂しくて、試すようなことを言った自分を心の中で何度叱ったかわからない。
でも心も体も結ばれるという大切なあの瞬間だけは、嘘でもいいから愛していると言って欲しかったのだ。
どんよりした気分でノロノロと寝台から出ると、身支度の手伝いに侍女が部屋を訪ねてくる。
今まで自分で身支度するのが当たり前だったセレアだが、この国ではコルセットとパニエという下着を身に着けてドレスを着なければならない。
背中の締め紐をひとりで調整するのは難しく、こうして毎朝着つけてもらっていた。