軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「失礼します」
扉の前に控えていた使用人が大きな扉を開けてくれたので、ゴクリと喉を鳴らし、緊張の面持ちで中へと入る。
足を踏み入れて真っ先に広間の中央へ視線を向けると、腕を組んで王座に腰かけるレイヴンと目が合った。
(レイヴン……やっと顔が見れた)
神殿では毎日一緒にいたので、ずっと離れ離れになっていたような気がした。
彼の姿を見た瞬間、気まずさよりも喜びの方がこみ上げてきて、じっと見つめてしまう。
「来たか」
「は、はい……それで話……と、は……」
そこまで言いかけて、セレアは言葉を失う。こちらに背を向けて、レイヴンの前で膝をついている男。その誰かは懐かしいダークブラウンの髪をしており、目を離せなかった。