軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
聖女はあくまで象徴であり、実質このカエトローグ島を統治しているのは大神官フェンリルである。法律の起草や治安維持、諸外国の侵入を阻止するための神官兵の配置などはすべて神殿が行っている。
つまり、神官などの神殿勤めは政治的権力を持つ公職ということになる。
「聖女様、礼拝が終わりましたので獅子神様に祈りを捧げに参りましょう」
このカエトローグ島の信仰の根源、獅子神がいるのは白い外壁に囲まれた緑あふれる庭園のような場所だ。そこは楽園と呼ばれ、セレアのみが立ち入ることを許されている。
「あなた様の清き信仰心によって、この島は神の恩恵を授かることでしょう」
濁った灰色の瞳を細めて、薄ら笑いを浮かべる彼に嫌悪を抱きながら、セレアは立ち上がる。