軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「あの戦いから、レイヴンが無事に帰ってきてくれてよかった」


 生きていくということは、簡単ではないのだと思い知らされる。これから先も、彼は皇帝として危険の中にその身を投げ打たなければならないときが来るのだろう。


 けれど、彼の帰りを宮殿で震えながら待つなんてことはしない。


(そのたびに私は、彼を生かすために戦おう)


 死ぬ瞬間さえ、共に在りたい。ふたりの永遠のために、出来うることは全てやると決めていた。


「セレア!」


 思いを巡らせていると、名前を呼ばれた気がして振り向く。遠くから、アグニが手を上げて駆け寄ってくるのが見えた。

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