軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 この国が閉鎖的であることも、彼が権力を誇示したいがためではないかと、そんな考えを巡らせてしまう。


 〝神がこう言ったから、こうするべきだ〟などと、人から考えを奪い意のままに操る彼は果たして、大神官様と崇められるに足る存在だろうか。


「まぁ、部屋のことはおいおいでいいでしょう」


 民やほかの神官たちには絶対に見せない下卑た笑みを浮かべて、視線を前に戻すフェンリル。


(いつまで、この男の人形として生きていかなければならないの?)


 貪欲で傲慢なあの目は、視線が離れた今もセレアの心に影を落としていた。

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