軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
◇七章◇
聖女の悲しき帰還
舞踏会を抜け出したセレアとレイヴンが夜空に浮かぶ月以外、誰も知らない甘い時間を過ごした日から一ヶ月が経った朝のこと。
セレアはレイヴンと同じ寝台で夢と現を行ったり来たりしながら、愛しい人の温もりを手探りで探す。
彼とは同じ寝台で毎日眠っているが、いまだ交わったことはない。昨日も口づけだけして、抱きしめ合ったまますぐに眠ってしまった。
それを少し寂しいと思ってしまう自分の方が破廉恥ではないかと思ってしまうほど、健全な関係を続けている。
「なんだ、目が覚めたのか」
彼も寝起きなのか、低く掠れた声が吐息と共に耳にかかり、彷徨わせていた手を握られる。指が一本一本絡んで、固く強く繋がれた。
「ん……レイ、ヴン?」
彼の体温にガクンッと眠りに落ちそうになるが、負けじと瞼を持ち上げる。
間近にあったのは、そのみむねに抱かれていることが、とても罪深く思えるほどに神々しい彼の微笑み。