軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「では、自警団の人選はお前たちに……」
「陛下、陛下!」
べリエスとアグニと共にパゼル国との共通条約の見直しについて議論していると、執務室の扉の外から慌ただしい女の声が聞こえた。
「入れ。いったい何事だ」
「失礼します陛下、落ち着いてお聞きくださいませ!」
入室を許可すると落ち着けといった本人が平静さを欠いた様子で、あたふたと室内を駆け回っている。
(こいつは、セレア付きの侍女か)
「落ち着くのはお前だ」
レイヴンは机に肘をつくと、組んだ両手の甲に顎を乗せてひそかにため息をついた。