軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「ですが、私は寛容なのです。あなたが皇帝に穢されていようと、公言しなければ事実はなかったことにできる」
「どういう、意味ですか?」
「聖女として、これからもこの地に君臨なさい」
(なんですって……それほどまでに、大神官の地位が大事なの?)
この身はもう、ひとりだけのものではない。愛する人の半身でもある。
だからこそ、ここで人柱になる選択は自分の中にない。
「お断りします。私はもう、聖女として生きる道を捨てました」
(私をセレアというひとりの人間として愛してくれた人のためにも、残酷な運命だと受け入れることはもうしない)
対抗心を燃やして、一瞬でも目を逸らすもんかと大神官を鋭く見据えた。その視線が気にくわなかったのか、掴まれていた髪を乱暴に離される。