軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「これより、聖女様の恩情で不死の祝福を与えます」


(不死の祝福って、なんのこと? それに、いつもと様子がおかしい)


 ここにいる人間たちは皆、どこか狂気じみた目でセレアを見上げていた。ゾクリと背筋が凍り、今にも逃げ出したくなる。


「聖女の血を聖杯に注ぎなさい」


(血ってまさか……)


 大神官の指示にマリオネットの如く従う神官たちが、金色の杯とナイフを手に近づいてくる。体内の血が逆流するほどの恐怖に、壊れたように足掻いた。


「なにをするの、やめてください!」


(血を飲むなんて正気とは思えない! 絶対に嫌よ!)


 ジタバタと暴れるたびに服から出た腕や足首に鎖が食い込んで鈍く痛む。体重の負荷がかかっているせいか、手首には痣ができていた。


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