軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「その血を我らにお恵みください、聖女様」


 加虐の快感に浸っているとも思える微笑みを浮かべて、フェンリルが耳元でそう囁く。


激しい恐れに、「ひぃっ」と喉を締めつけられるようなか細い悲鳴が漏れる。 


 拘束されて抵抗もままならないセレアの肌に、ナイフの切っ先が当てられた瞬間――。


「待て、愚かな信者どもよ」


 狂気に満ちた空気を清め、裂くような声が礼拝堂に響いた。


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