軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


***


 セレアがすでに国内にいないとわかってから、レイヴンは冷静に見せようとするも滲み出る怒りを抑えきれずにいた。


 修羅のような形相で早々に船を出し、精鋭部隊だけを連れてカエトロ―グ島の港に堂々と船を止めると、待ち構えていた神官兵たちを問答無用で全員縄にかけた。


「なかなか大胆かつ、強引な入国ですね」


 呆れ交じりのべリエスの言葉に、ふんっと鼻を鳴らす。


「この俺の妻を攫ったのだ。それ相応の対応をとらせてもらうのは同然だろう」


(いちいち入国の申請などしていたら、ここは不可侵の地だ。埒があかん)


 ただでさえ渡航に三日を要し、セレアが攫われてから五日も経っているのだ。じれったくて、何度発狂しそうになったかわからない。


これ以上時間がかかれば、冷静沈着の皇帝とて正気でいられない自覚があった。


 そもそも向こうの方が先に不正入国している。よって文句を言われる筋合いはない、と礼儀などはかなぐり捨てた。


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