軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


 しかし、レイヴンは腕組をしたままそこから動くことはしなかった。


 民たちは「侵入者め、ここが神の地と知ってのことか!」、「出ていけ、他所者は神の逆鱗に触れてネズミに変えられてしまうぞ!」と口々に叫んでいる。


 それらを小馬鹿にするようにレイヴンは「ハッ」と笑い、一歩前に出る。


 それだけで皇帝としての気品や圧倒的な存在感にあてられた民衆から、息を呑むような声が聞こえた。


「お前たちの眼には、この俺がネズミに見えるのか? 神とは誰を指す?」


 レイヴンから投げかけられる質問に民たちは顔を見合わせて「そういえば人だな」、「神は大神官様だろ」、「違うわ、獅子神様よ」という声があちこちで飛び交う。


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