軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「大神官は人間だ、人は神になどなれん」


 ならば誰が神なのか、と信じるものを失った民たちからは動揺が巻き起り、その場に混乱が起きる。


(一種の洗脳だな、これは)


 彼らが自分のものだと思っていた思考や意思は、大神官が自分を盲信するよう仕向けたもの。その現実を受け入れられなくなり、混乱が生じるのは当然のことだった。



「目を覚ませ! 神になど頼らず、その頭で考えることをやめるな!」


(ならば、現実に引き戻すだけだ)


 声を張り上げ、民の顔を見渡す。考えを他人に委ねることは楽だ。誰かがこう言ったから、と他者のせいにでき、傷つかずに済む。


だが、それでは生きている意味がない。自分で決めて未来を作っていくからこそ、人は幸せを心から感じることができるのだから。


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