軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「あのね、レイヴン」
「なんだ?」
唇が離れて、代わりにコツンと額を合わせてくる。至近距離で見つめ合いながら、離れていた時間に抱いたレイヴンへの想いを告げようと口を開く。
「側にいなくても、この胸にはいつもあなたがいた。だから私は、心折れずにいられたのだと思う。本当にありがとう」
彼がいなければ、セレアの心はとっくに壊れていただろう。大神官の言葉に抗うことは出来ないと、孤独な運命を受け入れてしまっていたかもしれない。
けれど、ふとした瞬間に彼と生きる未来が頭を過った。子をもうけて、家族になり。老いても手を繋いで、庭園を散歩する姿。
そんな幸せを想像したら、孤独に生きる道なんて選択肢から消えていた。