軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「もう、その心だけでは足りん。すべてを俺のものにしたい」
彼はこのように熱烈に、愛を語る人だっただろうか。いや、そんなものはどうでもいい。
(私も、心だけでは足りないから)
愛する人のすべてを手に入れたいという考えが強欲で、神に咎められる罪だったとしても。
かつて、神話のアダムとイブが禁断の果実を食してまで愛を知ろうとしたように、止められないのだ。
「セレア、なるべく早めに答えを聞かせてくれると嬉しい」
国をその手で治める皇帝が、聖女の肩書を失って普通の娘になったセレアに懇願する。それだけ自分が愛されているのだと実感して、喜びに心が震えた。