軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「仕方ないだろう、お前のこととなると余裕がなくなるのだ」


(私にはあなたしかいないと、どうしたら伝わるのかしら)


 まったく仕方ない人だな、と見つめる。でもそんな可愛らしい夫の一面に遭遇するたび、とめどない愛しさがあふれてしまうのだ。


「寂しいのは事実だけど、あくまで幼馴染としてだわ」


 それを聞いたレイヴンは、「でも」と口を開きかけた。セレアはその唇に人差し指を押し当てて、瞬時に口を封じる。


「私はずっと、あなたしか見えていないのよ」

「俺の妻は見かけによらず、大胆だな」


 たまらないというふうに熱い吐息交じりの声で囁かれると、ドクリと音を立てて心臓が高鳴った。


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