軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「ここまで、苦しかったでしょうね」
どこの誰かはわからないが、セレナは失われたひとつの命に胸を痛めて涙をこぼす。そのときだった、目の前の男が「うっ」とうめき声をあげたのだ。
「しっかり、しっかりなさってください!」
彼を生かしてくれたことを神に泣いて感謝したい気持ちだった。見ず知らずの者でも、こうして出会ってしまった以上、目の前で死なれるのは辛い。
「大丈夫、きっと助かりますから!」
(ここで彼と会ったのも、きっとこの人が生きたいと願ったからだわ)
自分がここで彼を見つけたことには意味がある。希望が見えたセレアは、男に何度も声をかけ続けた。いてもたってもいられず、その脇に腕を差し込む。