軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「そうでしたか、大変でしたね」


 誰しも知られたくないことはあるだろうと、それ以上は聞かないことにした。話が途切れたのをきっかけに、レイヴンの体を軽く押して寝台に横たえる。


「おい、なにをする」

「まだ病み上がりですし、もう休まれたほうがいいかと」


 興味心身に質問攻めにしてしまったが、彼は心なしか顔色が悪い。体だけでなく心を休める時間も必要なのだろう。


 彼の体に掛物をかけて寝台に腰かけると、その頭に手を乗せてゆっくりと撫で始めた。


「早く、よくなりますように」

「なぜ、俺を助けた?」


 セレアの手に身を任せるように目を閉じたレインが尋ねてきた。


(なんで……と言われても)


 改めて聞かれて理由を考えてみるが、思いつかない。


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