軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「理由が必要ですか?」
「なに?」
パチリと目を開けて、解せないとばかりにこちらを見あげる彼に肩をすくめた。
「倒れているあなたを見たら、いてもたってもいられなかったのです。咄嗟に体が動いていて、理由なんて考えている時間はありませんでした」
開かれた彼の目を閉じさせるように、瞼に手を乗せる。
一度は失われたと絶望した命が、まだ鼓動を止めていないと知ったとき。この人はまだ生きたいのだと思った。そうしたら、絶対に助けなければという気持ちがわきあがってきたのだ。
「ただ、救いたかっただけです」
「そうか……恩に……きる」
頭を規則正しく撫でているとレイヴンは微睡むように眉間の皺を緩める。あどけない表情へ変わっていき、掠れるように途切れた声にセレアはふっと口元に笑みを浮かべた。