軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「せ、聖女は純潔でないといけなのです」
しどろもどろに答えるセレアとは違って、レイヴンはシレッとしている。
(どうしてそんなに落ち着いてるのよ……私が過剰に反応しすぎなの?)
あれこれ考えて頭の中には思考の産物で、いっぱいいっぱいになる。最終的に彼の余裕は、圧倒的な経験の差からくるのではという結論に落ち着いた。
「とはいえ、一生結婚しないわけじゃないだろう」
「あっ……」
レイヴンの言い方は、結婚するのが当たり前だというニュアンスだった。
できることなら、誰かと愛し合いたいという願望はある。
だがそれは、普通の町娘ならばの話だ。聖女は人々に崇められる特別な存在であるのに、自由を奪われた囚人のようだと思ってしまう。
「なんだ、違うのか」
やるせない悲しみに打ちひしがれ、目を伏せるセレア。
それに気づいたレイヴンが訝しげに眉を寄せて問いかけてくる。これ以上情けない姿を見せないよう、ふうっと息を吐きだすとモヤモヤした感情を笑顔の中に閉じ込めた。