軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「んーっ」


 足場の悪い砂浜で踏ん張って、何度も倒れそうになりながら男を砂浜に上げた。その華奢な体からは想像もできない火事場の馬鹿力だ。


(どこかで休ませなければ)


 息があるとはいえ、このままでは寒さに衰弱していく一方だ。この命を守らなければと使命感に駆られるが、ここは絶対不可侵の島国。この島ではひとりの純潔な女性を神の遣いに見立て聖女として崇める。国の象徴として純潔なまま一生を終えるさだめを与えられるのだ。


 その聖女こそ、清く澄んだサファイアの瞳に白銀の髪をもつセレアのことだった。


 ゆえにこの神殿は神官以外の男は立ち入ることを禁じられている。それどころか、他国の人間がこの地に降り立つことすら許されない。

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