軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「聖女は結婚はできません。神に捧げられた身ですから」
引き攣る口元を引き上げて、声の音調をひとつ上げた。自分を褒めてあげたいくらいに、明るく振る舞うことができたと思う。
「では、一生独身を貫くというのか」
信じられないと言いたげに、彼は目を丸くする。
(この人、こんな顔もするのね)
滅多に動かない表情が崩れて、今度はセレアの方が驚く番だった。どこか抜けているようにも見えて、親しみがわく。
「なぜだ?」
「えっと、それが私に課せられた宿命ですから」
それが当たり前だと受け入れるしかなかったセレアに、なぜかと問うたのは彼が初めてかもしれない。本来ならば、疑問に思うことすら許されないからだ。
だから私も、本心を押し殺して、あらかじめ用意されていた答えを口にしたのだが……。