軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「くだらんな」


(えっ、くだらない?)


 バッサリと一刀両断され、呆然と彼の顔を見つめる。


 役目なら仕方ないと、誰もがこの答えを望んだというのに。彼はどうやら、違うらしい。あんまりなひと言だとは思うが、この島にはいないだろう彼の価値観に新鮮さを感じる。


「お前は宿命だといいながら、それを受け入れてないように見える」

「それは……」


(確かに、頭ではわかっていても心は追いついてないわ)


 別の国に生まれていたら、彼と一緒にこの島を出てしまえたら、自由に生きられるのだろうか。自分を知らない世界で、普通の人と同じように生活できるのだろか。


 なんて……幻想を抱いても、この地にいる限り逃れることはできない。自分の意思に関係なく象徴として選ばれたことに、理不尽だと嘆くことしかできないのだ。


 それに気づかされた途端、胸にひと際大きな痛みの波が襲いかかってくる。これ以上、今の現実を受け入れることへの愚かさに気づいてしまいたくない。


 すぐさま頭を振って、抱きそうになった別の未来をかき消す。

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