軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
「これから借りてきますね」
「ああ、手間をかけるな」
レインの視線に見送られながら、セレアはベールを深くかぶって部屋を出た。
廊下を歩いていると、すれ違う神官たちに頭を下げられる。これから掟破りな行為をする身としては内心ひやひやだ。
ひとつ角を曲がり目的の扉を視界にとらえると、気が急いて足早にアグニの部屋の前へと立った。
昼間ということもあり、人が多いこの時間帯にアグニの部屋を尋ねるのはかなり危険を伴うが、幸い周囲に人の気配はない。近況報告も兼ねて話がしたかったので、意を決して扉をノックをした。
「はい、どうぞ」
すぐに中から返事があり、セレアはもう一度周りを確認してサッと部屋に入る。後ろ手で鍵をかけると、「アグニ」と声をかけた。