軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う


「え……セレナ!?」


 机の資料に視線を落としていたアグニは、聞こえてきた幼馴染の声に驚き、弾かれるように顔を上げた。


 声が思いのほか大きく出たことに自覚があったのか、慌てて口元を押えると、こちらへ駆け寄ってくる。


「こんな時間に、誰かに見られたらどうするんだ!」


「ごめんなさい、あなたに話があって」


(それにしても、いきなりはまずかったわよね。驚かせてしまって申し訳ないわ)


 小声で咎めるような言い方の中に、セレアへの気遣いがこもっていて肩をすくめた。


「とりあえず、ここに座って」


 アグニに促され、仕事机の前に用意された椅子に腰かける。


 せっせと資料を片付けて紅茶を用意してくれたアグニが目の前に座る。カップに口をつけてひと息つくと、同時に顔を見合わせた。


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