好きでいいかも……
 南国の風に酔いしれていると、足元に人影が出来た。

 ジョンが私の横に立ち、紙コップに入ったジュースをくれた。

 エミリアのファミリーからの差し入れだろう。

 私は、コップを受け取ると、エミリアの家族に、笑顔で手を上げた。


 本当なら、ビールがいいのだろうけど、ケアンズでは、公共の場でのアルコールは禁止されている。


 ジョンは、私の横に腰を下ろし、コップを口にした。


「すみません…… カイトの奴、付いて行きたいって言っておきながら……」


「いいえ、夜の風が凄く好きなんです。こういう時間、幸せです」


 しかし、ジョンの表情が少し固くなった。


「ここはまだ、観光地で賑わっているからいいですが、夜は一人で出歩かないほうがいい……」


 ジョンは、チラリと私を見た。


「あっ…… そうですね…… 気を付けます」


「夜、出かけたい時は、いつでも声を掛けて下さい」


 もちろん、社交辞令だと分かっていても、なんだか胸の奥がくすぐったい。


「あ、ありがとうございます」


 良く考えてみれば、いつも、カイトが間にいて、ジョンとはまともに話をした事がない……


 私とジョンは、黙ったまま、カイトがエミリアと楽しそうに遊ぶ姿を見ていた。


 しばらくすると、ジョンの方から口を開いた。
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