好きでいいかも……

「日本に帰らなければいいのに? こっちで暮らす気はない?」

 ジョンの質問に、一瞬なんの事だか分からず、直ぐに返事が出来なかった。


「……」


「オーストラリアはいいとことだよ。住みやすいと思うけど……」


「えっ。そんな簡単には…… ビザとか仕事とか……」


 そりゃ、今までだって何度も海外で暮らしたいと考えたが、そんなに簡単な事じゃなかった。


「リサの仕事なら、こっちでも出来るよ。時々日本に出張すればいい……」


「そんな訳にはいかないですよ。住むところもないし……」

 私は、冗談だと思い笑ったが、ジョンは真剣な目を向けた。


「僕の家に住めばいい……」


「家政婦で雇ってくれますか?」

 私は、また笑って、ジョンの視線から逃げた。


 このまま、時間を過ごしていたら、気持ちがおかしくなりそうだ…… 

 私は、空いた皿を片付けるふりをして、部屋の中へと入った。


 だが、ぐっすり眠っているカイトをみると、動かすのは可哀そうな気がしてしまう。


「あの……。起すのは可哀そうだから、このまま泊まらせてあげたらどうですか? 明日の朝、迎えに来ていただければいいので……」

 私は、ジョンに向かって言った。


 ジョンは、しばらく黙っていたが、キッチンに居る私の後ろに近づいてきた。


「僕も、このまま帰るのは可哀そうだと思うけど……」
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