好きでいいかも……
「オーストラリアってね、離婚率が凄く高いの。仲良しに見える親子も、血がつながって無い事が、いっぱいあるのよ。私も彼の両親もそうだけどね……」

「へえ…… そうなの……」

「だからね、先の事なんて、何があるか分からないって思う。でも、今、彼を大事だって思う気持ちと、この安心感を大事にしようって思うんだ」


「今の気持ち?」


「そうだよ…… 確かに、違和感や不安な気持ちがあったら、結婚は考えた方がいいかもしれないけど。今、誰を好きかでしょ?」


「えっ」

 思わず彼女に目を向けたしまった。


「お姉さん、好き人いるんでしょ?」

 彼女はそう言って、ニコリと笑みをみせると、彼の肩にストンと頭を傾けた。


 私は、窓の外に目をむけると、雲しか見えない窓に、ケアンズからだいぶ離れてしまった事に安堵しながらも、いいようのない寂しさを感じた。


 ジョンは、今頃何を思っているだろうか?


 無我夢中で、私は、ジョンから逃げてしまった。

 ジョンは、ゆっくり話し合おうって言ってくれたのに…… 

 私は信じる事が出来なかった。


 勝手に居なくなり、怒っているだろうか?


 ふっと、カイトの顔が浮かんだ……

 しまった、いくらなんでも、カイトには一言伝えるべきだった。

 あんなに、私を信じて懐いてくれていたのに……


 もし、嫌われたと思っていたら、カイトを傷つけてしまう……

 直ぐに、手紙を書こう……

 日本へ着くまでの飛行機の中、ジョンとカイトの事で頭がいっぱいだった……

 
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