好きでいいかも……
「でも、カイト君には、悲しい思いさせちゃったんじゃない?」
「……」
「もし、お母さんにも、理紗にも置いてかれたなんて思っていたら、ちょっと残酷なんじゃない? しかも学校のお迎えまで行っていたんでしょ? カイトにしみれば、大きな存在になっていたはずよ!」
晴香の言っている事は、もっともだ……
私の、好奇心が、カイトを傷付ける事になってしまった。
「ええ…… 手紙書いて送りました……」
やはり、カイトの事を言われると、申し訳なくて胸が苦しい。
「そう…… なら、いいけど…… それにしても、オーストラリアじゃねえ……
簡単に戻れないじゃない? どういう結果になっても、彼の話は聞くべきだと思うけど……」
「もう、仕方ないですよ。帰ってきちゃったし……」
「彼は、理紗の連絡先とか知っているの?」
晴香の言葉に、私は大きくクビを横に振った。
「ああ……」
晴香の、呆れた声が胸の中に、大きく響いた。
「こういう運命なんですよ……」
私は、力無く笑った。
「そうやって、また逃げる」
「そうですね……」
「私も、しばらく恋愛なんていいとは思っているけど、いつか、一緒に安心して並んで歩ける人と出逢えたらいいなって思う」
「えっ?」
思ってもいなかった晴香の前向きな言葉が、あまりにもカッコよくて、思わず聞き返してしまったのだ。
「別にいいでしょ? 理紗も自信もちなさいよ! 社長さんが惚れるくらい、あなた美人なんだから?」
そう言った、晴香の笑顔はとても綺麗で、店の中の男性が何人も、こちらをチラチラ見ていた。