好きでいいかも……
他愛も無い話に盛り上がり、一時間程たったのだろうか?

「そろそろ、帰るわ」

佳代子がスマホの画面を見た。


「あっ。私も」

亜美も、財布から千円札を数枚出し、鞄を手に立ち上がった。


「久しぶりに会えて楽しかった。なんか、ストレス解消できた感じ!」

佳代子も亜美に続いて、手を振って帰って行った。


 テーブルには、食べ残しのチーズと私と晴香の二人だけになった。


 晴香は職場の先輩であり、仕事には厳しい人だが、気持ちの優しい姉のような存在だ。

仕事帰りに二人で飲む事もしばしばある。


「晴香さん、落ち着きました?」


「うん。色々助けてもらったわね。お蔭でスッキリできたわ」

晴香は、女性から見てもドキッとするような綺麗な笑みを見せた。


「まあ、その件に関しては、私の方が先輩ですから」

 自慢ありげな顔で晴香を見た。


 声を出して笑った晴香は、ふと真顔になった。


「どうして、結婚なんてしたんだろう? こんなに辛い思いをするのに……」


「私にも、よく分からないです。でも、あの時は、幸せだと思ったし。ずっと続くものだと思った気がするんですよ」


「どこで、何が狂ってしまったのかしら?」

 晴香が、眉間に皺を寄せた。


 いつの間にか、店の中も客が増えてきたようで、店員の動きが慌ただしくなってきている。


「私、結婚する少し前に思った事があるんです」

 私は、ぼそっと口にした。
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