好きでいいかも……
「相手を嫌いな訳じゃないんだけど、結婚したら、この人に合わせなきゃならないのかな?って。
自分が自分じゃなくなるような違和感を、ふっと感じた時があったんですよね…… 
でも、今更そんな事って、自分に言い聞かせて目を瞑ったっていうか…… 
だけど、結局それが、的中したんですよね。
 結婚生活始まって、笑うタイミングとかでさえ、相手に合わせるようになって、自分は何が面白くて、どんな笑い方するのかも分からなくなっちゃったような……」


「あっ、なんか分かる気がする。
 相手の思うような言葉を言わないきゃいけないような、自分の言葉じゃない違和感があったわ…… 
 気が付いたら、自分の言葉が無くなっていたの。思い切って、自分の考えを言ってみたら、機嫌悪くなっちゃって…… 
 ダメだって思ったのよね……」

 晴香はふう―とため息を着いた。



「これって、私達が悪いんですかね? それとも、相性が悪かったのかな? やっぱり、相手の事、ちゃんと分かって無かった気がするんですよね……」


 サワーの入ったジョッキの周りを指でなぞりながら言った。


「その人を選んだのは自分だから、責任は私にもあるとおもうけど…… どんな理由があったって、裏切られたらやっぱしね……」

 晴香の表情が少し曇った。


 私は店員に、追加のサワーを頼むと大きく息をついた。
< 8 / 79 >

この作品をシェア

pagetop