Noise Breaker
休み時間。
「斎藤くん、ちょっと回りに行こうか」
ほぼ棒読みであたしが声をかけると奴は嬉しそうに頷いた。

「ねぇ~カズで良いって言ったでしょうよ!」
「ここがトイレねー」
「カズって言ってよ~」
「んで、ここが」
「なぁ、言えって」
淡々と説明していたあたしの目の前に回りこんで斎藤は言った。
「っ!」
不覚にもその外見と長身と声と目にときめきかけた自分。
最悪だ。
「ね?」
だぁ!もーどうにでもなれ!
「カズ・・・」
「なぁにー?アキっ」
「ここが図書館・・・って、はぁ?!」
アキ?
確かに言ったよねコイツ。
「アーキっ」
何嬉しそうに呼んでんだよ。
ウザ・・・く無いのはどうしてだろう。
まぁ、いいか。
「はいはい、良いよそれで」
「やった」
「場所覚えた?」
「大体はねー」
「じゃあもう良いね、教室戻ろう。」
「はーい」
この短い休み時間でほとんどの場所を回れたのは、あたしの足の速さか、コイツの覚えの速さか。
まぁでも、これならすぐ元の生活に戻れそうだ。

あたしに他人なんていらない。
あたしは一人が好きだから。
だから・・・
カズも早く遠ざけたい。
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