何時だって君だけだから
困るよ、すごく……
だってアイツだよ、アイツなんだよ?
見るな、目で追うな!
頑張って否定してみたけど、避けたりしたら変だから出来なくて、過去最高に頑張って変わらない私を繕ってみた。
でもね、バカは私。
友達って、友達の微妙な変化を変なタイミングで気づくの。
有り難いし、たまには迷惑だったり、でもやっぱり嬉しいもの。
今は、アイツを含めて私の何気ない変化に気づかれてしまった。
ただ、アイツが原因だとは気づいてなくて……
そう… バカは私。
何も気づいてなくて……
私の変化に敏感だったのは、アイツだった。
私の知らない所で、那美子がアイツに微笑んで、アイツは那美子に苦笑混じりのようで、実ははにかんだ笑みを見せてた。
「 茉希 」
今、アイツが私の頭に左手を乗せて呼ぶの。
その手が、髪を優しく滑り降りてくの……
その手が、肩に乗せられて……
私のドキドキが勝手に加速して、もう、きっと私のアイツを見る目が女になってる。
ねぇ 奏太……
あんたに気づかれたら困るの。
あんたには私は女じゃないでしょ?
女だけど、ただの女だから、特別じゃないから困るの……
「 茉希さぁ 最近 ちょっと可愛いよな 」
「 最近!? ちょっと!? 微妙ないい方やめてよね 」
ちょっとだけ?
最近なの?
ずっと前から、たぶん普通に可愛いんじゃないの?
ちゃんと女なんだよ、私だって。
「 茉希、なんか飲も 」
アイツは勝手に決めて、勝手に私に近づく……
しかも、アイスカフェオレ1つだけでストロー2本。
勝手に差し込んできて、私が飲もうとしてるのに……
私がストロー加えた時を見計らってアイツもストローを加えて……
見ちゃった、アイツを、目をバッチリ見ちゃった……
だから瞼を伏せて見ないようにしてた。
こんな恥ずかしい事をしちゃうアイツなんか……
そんな私を見ながら飲んでいたアイツなんか知らない。
なんだか嬉しそうな笑みをしながら飲んでいたアイツなんか知らない。
ある時、那美子に言われた。
“奏太、前から好きな人いるっぽいよ”
それを聞いた私の中で、ものずごい緊張感で気持ち悪く感じた。
それは、私じゃない…
そうわかっていたから、泣くなんて変だから。
那美子の前ですら、平気なフリして言ったの……
“そうなんだ、うまくいけばいいよね”
以前の私ならこれが本心。
でもね、もう違うんだよ……
奏太を、アイツを……
「 茉希、たまには映画行くか 」
私なんか誘ってどうするの?