何時だって君だけだから
映画を見に行く、二人で。
二人きりで。
そんなこと、気にも止めなかったあの時には戻れない。
照れて嬉しがる私と、戸惑って困る私がいる。
でも、アイツの変化に何となく気づいたの。
チケット買う時の私の顔をよく見てくる。
席を選ぶ時に、ここにする?って言いながら頭を触ってきたり……
妙に、私に触れてない?
意識しすぎていた私が、アイツの変化に意識してる。
「 何、ポップコーン欲しい?」
「 え… あ、別にいらないけど 」
「 チョコポップあるけどいらない?」
「 買う?」
「 買ったる 」
あれ?
いつもなら自分がほしいから買う奴だったような……
「 ねぇ 奏太 」
「 ん?」
この時の奏太の私に見せる顔がやたらと優しく見えて、また、頭を左手でポン、と。
なんで触るの?
私の頭が気になるの?
頭に何かつけたりしてる?
「 奏太って、変だね 」
「 は!? いやいや、変なの茉希だし 」
「 ちょっ… 」
席で話ながら、奏太が私を変だとか言っていきなり手を握ってきた。
「 何、何、この手!」
「 手が暇らしい 」
意味わかんないって!!
なんで繋ぐのって!!
「 わかりやすいよ、茉希は。しかも鈍感だしな 」
は… 何が?
「 俺が茉希を好きだって気づいてない 」
え……
「 茉希がやっと俺を意識するようになって、それを隠そうとしてるだろ 」
何言って……
「 今、俺が好きでしょ 」
あ……
「 茉希が好きだよ 」
私の手を繋いだまま、奏太の口元に……
「 茉希、認めたら? 」
あ~…… 私、ほんとにバカだなぁ
奏太が私を見てたなんて、いつもいるからわかんなかった。
「 茉希、俺が好きだって言ってんのに… ほんとは茉希から言われたかったんだけどな~ 」
私の気持ちは否定しても意味なかった。
初めから仕組まれてたような気さえする。
まっすぐ見てくる奏太に、伝えなきゃ……
「 うん、奏太が好き 」
「 俺も、茉希が好き 」
繋いだ手は離されず、離さず。
私が、恋したのはアイツ。
私の事を、誰より近くで見てた奴。
いつもより、もっと…
もっと、見てて。
「 茉希、キスさせて 」
いいよ、奏太…
完。