「ねぇねぇ!」


いきなり後ろから肩を叩かれ、びっくりして声が出そうになった。


誰だ・・?

後ろを振り返ると1人の女子が立っていた。



「いきなりごめんね。
あのさ、河原君だよね?」


「違う。」


「え・・だって席って出席番号順だからそこ河原君の席だと思うけど・・。」


「河原ハヤタは偽名だ。
訳あってずっとこの名前を使ってる。

これは秘密にしてくれ。
絶対にだ。誰にも言うな。」




とっさにすぐこんな嘘で切り返すことが出来た自分に驚いた。

人間って“死”が隣合わせになると、こんなにも頭の回転が早くなるんだな。

これからは“河原ハヤタは偽名”って設定にしなきゃいけないのか・・。

この子が誰にも言わないことを祈るしかないか。



「意味分かんないけど、一応河原君なんだね!
河原君って末丸東中学のサッカー部で10番つけてた人だよね!?」


「違う。つけてない。」


「もうさっきから冗談言うのはいいよ!

私が通ってた学校、県大会の2回戦で河原君達に負けたんだけど、

“あの10番の人すごいね”ってみんなで話してたんだ。」


「君はサッカー部のマネージャーやってたの?」


「うん!私、夏目チカ。よろしくね。
高校でもマネやろうと思ってるんだ。」



夏目チカか。

まさか中学の時の対戦校だった人が俺のこと覚えてくれているとはな。


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