嘘
「ハヤタ君。どうしたの?
何かあったの?」
帰り道、なるべく平静を装っていたつもりだったけど、ミサキが聞いてきた。
「何もないよ。
たまには早く帰って公園で喋らない?」
「う、うん。」
夕暮れ時、公園に小学生はもういない。
晩ご飯の時間なのかな。
いつものベンチに2人で座る。
「この時間に公園に来るのは・・・ちょっと新鮮だね。」
「そうだね。」
「・・・・私、何か飲む物買ってこようか?」
「大丈夫。」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・何か・・・あったの?」
「ミサキさ、俺と一緒にいて幸せ?」
「・・・・」
「・・・・」
「ハヤタ君・・・」
「ん?・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・」
全くの不意打ちだった。
今までのミサキからは考えられない大胆な行動だった。
左に座るミサキの顔を見た瞬間、彼女の両手が俺の頬を包み、お互いの唇が重なった。
「私、幸せだよ。
ハヤタ君が隣にいてくれるから。
この前、図書室でハヤタ君に
“他の男の人に手を触らせるの禁止”
って言われて・・・思わず気を失っちゃったけど、すごく嬉しかった。」
「・・そっか。」
「ハヤタ君の方こそ・・・私なんかと一緒で・・・幸せ?」
“今はなんか・・・複雑だよ”
そんなこと言えるはずも無く、言葉を飲み込んでミサキを見つめた。
「俺も幸せだよ。」
嘘にまみれた台詞を言い終わると、今度は俺の方からミサキにキスをした。
第13話 完