嘘
ポケットからスマホを取り出すと電話帳の検索ボタンを押す。
目当ての宛先が見つかると電話を掛ける。
「もしもし。お久しぶりです。
すみません、パンクの修理なんですけど・・・
・・・実は今、森中グラウンドに行く途中の公衆トイレ前なんですけど、引き取りに来れますか?
・・・はい。はい。ありがとうございます。
よろしくお願いします。」
よし。
電話を切ると不思議そうな顔をしたチカが俺を見ていた。
「母ちゃんと仲良い知り合いで、自転車屋さんがいるんだ。
今、ちょうど暇だから取りに来てくれるって。」
「ホント!?ありがとーハヤタ。」
チカが嬉しそうに笑う。
「ちょっと写真撮らせて。」
「え!?今日はやめてよ・・。
汗かいて髪もベタついてるし。」
「はぁ!?お前じゃねーよ。
自転車の写真撮るんだよ。」
「!!」
勘違いに気づき、恥ずかしそうに顔を手で押さえるチカを尻目に、
チカの自転車の写真を撮り、自転車屋さんにメールする。