嘘
入学式から3週間ほど経った。
毎日ボイスレコーダーを忍ばせ、夜にノートに書き留める。
この生活にもほんの少しだけ慣れてきた。
学校でも家でも、極力会話を交わさず、必要最低限しか声を発しないようにする。
一瞬でも気が緩めないから家に帰ったらクタクタだよ。
だけど、どうにかこうにかやっていけている。
・・・ただ・・・
・・・・・悩みの種は、目の前にいるこの女子だ・・・・
「早くグランド行けよ。
もう練習始まるぞ。」
「一緒に来てよ。
練習見てたら河原君もやりたくなるって。
サッカー嫌いだなんてどうせ嘘なんでしょ?」
「・・・・本当だ。」
「もう!素直じゃないんだから。
じゃあもう行くね。また明日。」
「じゃあな。」
ふぅ~。
今日も夏目チカの尋問から逃れることが出来た。
夏目はそそくさと教室を出ていった。
サッカー部のマネージャーになった夏目は、毎日のように俺に絡んでくる。
昨日の練習がどうだとか、先輩がどうだとか。
そして最終的には俺を誘ってくる。
こんなことなら、ハルイチと同じく
“病気を抱えている”
っていう嘘でもつけばよかったな。
でもあいつの性格がまだいまいち分からないから、大事になっても困るし。
みんなに言いふらされたら余計に厄介だ。
ハルイチもうまく誤魔化してくれているみたいだし。
早く諦めてくれないかな。