嘘
「河原君は・・本は好き?」
「・・・好き。」
「よく読むの?」
「・・・読む。」
「好きな作家とかいるのかな?」
「・・・・“走れメロズ”書いた人・・・」
「現代文学が好きなんだね。」
「はは。」
まずい、どんどん嘘が重なる。
早くどっか行ってくれ・・・
「あ、ごめん。
勉強の邪魔だったよね・・。」
「いやまぁ大丈夫だけど。」
「また・・・話し掛けてもいいかな?」
「・・・・いいよ。」
松尾さんは本人にとって“いつもの席”である少し後ろのほうの席に座り、本を読み始める。
ああいう子は中学の時にもいたな・・。
松尾さんを見て、中学の時の図書委員を思い出す。
ほとんど喋る機会はなかったけど。
少し引っ込み思案で、バスケ部とかバレー部に入ってた活発な女子に比べたら大人しい。
きっと松尾さんもそういうタイプなんだろうな。