『死神の寿命は2000年と言われている。
私は1800年以上生きているから、あと200年程の命だ。』


「え・・・」


『人間の物差しで200年という数字を測るな。

犬にとっての“10年”と人間にとっての“10年”は違うであろう。それと同じだ。』



「じゃあ・・・」


『私の命は間もなく終わりを迎える。』


「そうなんですね・・。」



『これまで、お前達が朝起きて顔を洗って歯を磨くことと同じように、私は人間の命を奪ってきた。

戦争や震災。100歳まで生きた老人、
母親の腹から出てきて間もない赤子。

数え切れないほどな。


そして1800年が過ぎた時、

ゼウスのじいさんの命令により、次に奪う人間の命を最後に・・

お前達人間で例えると“引退”をすることとなった。


ゼウスのじいさんが最後に私に命じたのは、14歳の中学3年生。

翌日15歳の誕生日を迎えるはずだった
“河原ハヤタ”という少年の命を奪うことだった。』





「・・・俺・・・だったんですね・・・。」




『何故そう言ったか自分でも分からない。

最後にお前の命を奪うことが決まった時、私はゼウスのじいさんの前で思わず、

“命を救う死神がいるのもありではないか”

と漏らしてしまった。


だが、ゼウスのじいさんの決定に背いては“あの世”の均衡が崩れる。

だから“条件付き”ということで許しを得た。』




「そう・・・だったんですね。」




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