嘘
『河原ハヤタだな。』
「うわああああああ!!!!」
自転車から転げ落ちたのは生まれて初めての経験だった。
とっさに受け身を取れたのは良かったけど・・・
「ば、化け物!!!」
『おい、落ち着け。』
これが落ち着いていられるか!
目の前にはキツネとゴリラと鷹を足して3で割った・・・ちょっと違うか。
もう意味分からなくなってきた。
とにかく一目で人間ではないと分かる何者かがいた。
いたというか浮いていた。
『私は、死神だ。』
「死神!?」
『お前の寿命は今日で終わる。』
夢なのか?ドッキリなのか?
と、とにかく逃げなきゃ!
『そこを動くな河原ハヤタ。』
「は、は、はい。」
一瞬で心が折れた。
逃げられない。怖すぎる・・・。
『お前はこの後、家に向かう途中で信号無視をした車にはねられる。
お前の寿命は今日で終わりだ。』
「え・・・・」
俺が・・・・今日死ぬ・・?
「いきなり何言ってるんですか。」
『あまり信じていないようだな。
よかろう。本当ならこの後どうなるか見せてやる。
私の目をよく見ろ。』
真っ赤なその目を直視するのはめちゃくちゃ怖かったけど、言うとおりにしないと何をされるか分からない。
『お前の脳内に映像を送り込む。
第三者の目線で見せるから、より客観的に自分の死が分かるだろう。』
・・・・・・・・・・
あ、俺だ。
ここからすぐの交差点を自転車に乗って急いでいる。
って危ない!!
横断歩道を渡っていた俺は、スポーツカーに撥ねられた。
・・・・・・
血まみれになり横たわる俺。
そこに駆けつける犬の散歩をしていたおばさん。
サイレンと共に来る救急車。
病院の手術室に運ばれる俺。
その前で取り乱す母ちゃん。
まるで夢を見ているかのように次から次へと場面が変わり、俺は・・・死んだ。
・・・・・・・・・