嘘
グランドの隅で休憩するクラスメイトに近づく。
「なぁ、重本にもっとパス回せよ。
結構フリーでいるぞ。」
「ああ?いきなり何だよ河原。」
俺が自ら話し掛けたことでみんな若干の驚きがあったようだ。
「重本にパス出してもこいつすぐ取られるじゃんかよ。」
次から次へと賛同してくるクラスメイト達の中、張本人の重本は申し訳なさそうに俯く。
「重本も遠慮しないでもっと攻撃参加していいんだぞ。」
俺と同じで数少ない、運動部に所属していない重本。
・・・確か園芸部だったかな。
よく花壇の世話しているのを見かける。
お世辞にも運動ができそうとは言えないぽっちゃり体型だけど、
ディフェンスの一番後ろから見ていてるとよく分かる。
重本は一生懸命ボールを追いかけながら走り回っている。
さっきの試合は遠慮がちに俺と同じぐらいまで下がったポジションにいたけど。
「取られないように相手引きつけてからパス出すとか、やり方はあるだろ。」
「次は5組と優勝決定戦なんだぞ。
向こうはサッカー部何人もいるし、あの高原って奴でかすぎだろ。
重本にパス出してたら勝てねぇよ。」
分かってないな・・・。
学校の行事なんだから別に勝ち負けはどうでもいいんだよ。
こんな楽しいのに、これじゃ重本がサッカー嫌いになっちゃうじゃないか。
「河原君、僕は別に大丈夫だよ。
みんなの足引っ張りたくないし。」
重本がこの場を納めようとしてくれたので一旦引き下がる。