嘘
第8話 物議を醸した日 前編
第8話 物議を醸した日 前編
球技大会が終わってから、男子の仲はそれまで以上に深まっていた。
今までそれほど目立っていなかった重本もあのゴール以来、女子のグループや男子達と気軽に話す姿が見られた。
困ったのはせっかく作り上げた俺の一匹狼のイメージも少し揺らいだことだ。
「河原たまには一緒に飯食べようぜ。」
「大丈夫。ありがとう。」
心が痛いが、今まで通り極力会話は避けないとな。
いつもの場所で1人弁当を食べながらスマホを眺める。
画面にはスポーツニュースが映っていた。
「チケット外れちゃったしな。」
今日はサッカー日本代表の試合がある。
代表戦は関東のスタジアムで行われることが多いけど、何年ぶりかにこの地方で開催される。
人混みに行くのは危険な行為だが1人で観るなら大丈夫かと、チケットを応募したけど、さすが代表戦だけあって取れなかった。
「あー・・行きたかったな・・・。」
小学生の時、1度だけ代表戦を生で観たことがある。
海外で活躍する日本人選手達のパスワーク。
レベルが違うセットプレーの動き。
格上の相手から1点をもぎ取る執念。
当時の俺は終始感動して涙を流していた。
「しょうがない。テレビで我慢するか。」
放送予定をチェックしていた所で予鈴が鳴ったので教室に戻る。