嘘
「ただいま。」
家に帰ると先程までの緊張感が和らいだ気がした。
と同時に、お腹が鳴った。
腹減った・・・。
着替えようと自分の部屋に行こうとしたとき、母ちゃんがリビングから現れた。
「おかえり。お腹すいてるでしょう?
すぐに用意するからお風呂入ってらっしゃい。」
「ああ、・・・・・」
・・・・ん?・・・・
“お腹すいてるか?”
って今聞かれたぞ・・・・
「・・・・お腹すいてない・・・。」
「なんだい。ハルイチ君と何か食べてきたのかい?」
「・・・ああ食べた・・・。」
「だったらそう連絡しなさいよ。
今日はあんたの好きな生姜焼きだったのに。」
母ちゃんはリビングに戻った。
ハハハハ。そういうことか死神。
物分かりの悪い自分だったけど、ようやく理解した。
何気ない日常。何気ない生活。
今まで深く考えたことなかったけど、誰かとの会話って大体“質問”と“その答え”で出来てるんだ。
自分の部屋へと戻り、グーグーと鳴るお腹を両腕で押さえつける。
『死ぬより辛い日々がお前を待ち受けるだろう』
死神の言葉が頭の中で繰り返された。
第1話 完