嘘
「河原君ずっと笑ってたよね。
1点取られた時も、全然ボール取れなくてみんなで追いかけ回してる時も。
中学の時に見たときと一緒だった。」
「そんなニヤニヤしながらプレーしてないよ。」
「ううん。何だろう・・勝ち負けというより、心の底から楽しんでた。
中学の時だって。
3年生の時、県大会2回戦で私達の中学と試合した時のこと覚えてる?」
「・・・覚えてない。」
「私達が2-0で勝ってたのに、
相手チームの10番の人がずっと笑顔で味方を励ましてたから、一緒にマネージャーやってた子と何となく嫌な予感してたんだ。
それで結局後半で3点取られて逆転負け。
河原君1人にやられたって感じ。」
「俺1人の力じゃなくて、全員が諦めなかったからだよ。」
驚いたな・・・確かに今でもあの試合は鮮明に覚えてる。
0―2になった時に、
「こんなに楽しいのに、まだまだこの仲間達と一緒にプレーしたい」
って強く思ったら火事場の底力みたいなものが出て、
俺が3点取ってハットトリックを決めた。
もちろんハルイチや他のみんながディフェンダーを引きつけたり、
良い場所でフリーキック貰ってくれたり、お膳立てしてくれたからだけど。
あの時、同じ場所にいた夏目とこうやって高校で出会って、今一緒にいるって考えると世の中は狭いな。